ビフォーアフターのこと
私の作ったレギュラー番組の中では、もっとも新しい番組である「大改造!劇的ビフォーアフター」(テレビ朝日系列日曜20時〜)の視聴率が最近、じわじわと上がってきました。仕事仲間や知り合いからも「見てるよ」とか「感動したよ」とか言われることが多くなりました。とっても嬉しく思っています。というのも、この番組は現代のテレビ番組の定番スタイルであるところの、いわゆる「視聴率をガンガン取りに行く!」スタイルとは違った、かな〜り異色の作り方をして作っているからです。最初から、いつかは視聴率は上がっていくだろうという自信はありましたが、正直、もう少し時間はかかるだろうと思っていました。
もともと、この番組を作る際に、私は自分の中で、かつて作った二つの番組の魅力をひとつの番組の中で表現しようと思っていました。ひとつは「料理の鉄人」における<プロフェッショナルだけが持つ技術とプライドが見せる感動>であり、もうひとつは「SURPRISE!」における<市井の人々が持つ素朴だが生き生きとした感動>でした。言ってみれば、<プロの感動>と<素人の感動>という、どちらかと言えば本来相反する感動をひとつの番組の中で表現することで、お互いがお互いを補完しあう、まったく違った魅力が生まれるはずだ、という思いこみがこの番組の出発点でした。
時代背景としては、不況時代を背景に<リフォーム>が流行っていたこと、そして、テレビ番組のスタイルが一方向に走りすぎていて「プロジェクトX」に代表されるオトナが安心して見られる番組への確かな願望が巷に溢れていたことも、大きかったと思います。ほんの数年前なら、この番組は企画そのものが通らなかったかもしれません。ですが、時代の空気を背景になんとか企画が通り、さらには、素晴らしいスタッフたちが集まったことで、さまざまな障害を乗り越えてハイレベルな番組が作れました。そして、この優秀なスタッフたちのおかげで、テレビ収録でありながらも同時に発注者と請負人が存在する現実のリフォーム工事でもある(ひとつのリフォームに最短でも2〜3ヶ月の時間がかかります!)という、普通のテレビ番組収録の数倍も面倒くさいこの番組を、現在も高い水準のままに作り続けることが出来ています。だから、どうしても成功して欲しい番組だったのです。
また、自分自身の個人的な衝動としては、最近、同世代の男性たちが「見たい番組がないので、テレビはニュースとスポーツ番組とプロジェクトXくらいしか観ない」と言うのをしばしば耳にしていて、そういった人たちにも楽しんでもらえる番組を作ってみたかったというのもありました。もちろんこの番組は、彼らだけをターゲットにした番組ではありません。若者からお年寄りまでの幅広い視聴者層が楽しめる番組を目指しています。ですが、まず何よりも、最近テレビを見なくなった人たちにテレビをつけて貰える理由になるような、そんな番組にしたいと思っています。
ところで、番組を企画している最中、番組に登場するだろう建築家たちのことを、仮に「リフォームの鉄人」と呼んだりしていましたが、さすがに番組内でそんな言葉を使う訳にはいかず、「匠」という言葉を選びました。理由は二つ。ひとつはそれが、誰もが知っていながら、あえて誰も使おうとしない言葉だったこと。そしてもうひとつは、漢字で書くととっても美しい日本語だったから。この二つの理由で、この番組に登場する建築家たちを「匠」と呼ぶことにしました。
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