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2004.09.14

狂ったバランス

 こないだ話した「肉体改造プロジェクト」の話の続き。

 「あなたのカラダ、人間じゃないわね」と言ったジムの先生が言いたかったこと、それは、私のカラダのバランスが、長年の異常な生活習慣のために狂いまくっているということだった。カラダの左右のバランスが完全に崩れていて、さらに前後のバランスも狂っていて、それぞれ、左半身と背中の筋肉だけが人並み程度に生き続けて、替わりに、右半身と腹部の筋肉が完全に「欠落」しているというのだ。

は!

 いや、ある程度のダメさは想像していたが、「欠落」は想像を遙かに超えた表現だった。しかし、それを実感させるために、先生が私のカラダの筋肉をひとつひとつ解説する。

「この筋肉、まだかろうじて生きてるのがわかる?」

 そう、先生に言われた筋肉は確かに、先生の手によってひねられると激痛が走った。さらに、ひねられたあたりの肉が激しくもんどり打っているのがわかる。

「でも、こっちの筋肉、こっちはなくなっちゃってるの。わかる?」

 …と言われた筋肉は、先生の手によってひねられているのはわかるし、確かに痛みも走っているのだが、何ともあやうい痛みだ。ぼんやりしているくせに、嫌〜な痛みだけが静かに走る。そして、ひねられているはずなのに、そのあたりの皮膚やら筋肉の束がほとんど反応を見せない。ぼんやりとしている。

げっ!

 同様のチェックが私のカラダの数カ所で繰り返された。どこも、片側の筋肉だけが生き残り、それとバランスを取るべき筋肉が「欠落」している。

 これはえらいことになっているぞ!

 先生との対話の中で、だんだんとその原因がわかってくる。三十歳直前までは劇団暮らしだったので、持久力だけなら同世代の人間に負けないぐらいに持っていたし、それなりに動き回っていた。ところが、三十歳頃から放送作家専業になって、朝から朝まで「座りっぱなし」の生活が始まった。会議も執筆も、基本的に座りっぱなしだ。おまけに、初期にはしょっちゅう立ち会っていた収録現場にもだんだん行けなくなって、会議から会議へと渡り歩く間、運転免許を持たない私はタクシーの後部シートで横になって熟睡するか、電話で打合せをする。そんな方法で、会議場所から会議場所へと移動しているので、本当に歩かなくなった。どんどんどんどん歩かなくなった。睡眠時間を削る日々が深刻化すると、ほんの少しでも体力を使って眠くなることを避けようと、より歩行距離が縮まっていった。正直、一日にほとんど十数メートルしか歩かない日だってある。ほとんど会議中のトイレ往復ぐらい。最大歩行距離は、社屋が細長いフジテレビ内部の移動くらいか?本当に歩かない日々が続いた。そのうち、ちょっと歩くだけでも足が疲れるようになっておよそ十年!十年の特殊な日々が私のカラダをすっかりダメにしていた。気がついたら、エラいことになっていた!

 先生が冷静な口調で質問する。「治したい?」
 
 「ハイ、是非!」私はむしゃぶりつくように即答していた。

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