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2008.10.20

優しい椅子

Imgp6010 私の生まれた大阪には、建築家・村野藤吾さんの代表作がたくさんある。

私にとっては、子供の頃から慣れ親しんだ風景だ。縦スリットの美しい神殿「心斎橋そごう百貨店」(2003年解体)や、唐破風のミルフィーユ「新歌舞伎座」や、夕暮れに立ちつくす青春群像「梅田換気塔」…など。(参照

 そんな、村野藤吾さんの展覧会に先日、行ってきた。夏頃にその開催を知っていたものの、バタバタしてるうちにてっきり終わっているかと思っていたら、まだやっていた。その事実を某ブログで知って、慌てて行ってきた。

 とても楽しかった。建築家の展覧会とは思えない楽しさに満ちていた。印象深かったのは、東京・日生劇場のエントランスホールにある階段の手摺りデザインを指示するときに村野さんが語ったという以下の言葉。

「頑丈なのはいかん、礼儀的に紳士が貴婦人にちょっと手を差しのばす、あの感じ」

 この辺の言葉に、村野さんの真骨頂を見る。作品のすべてが無駄に主張しすぎていない。しばしば大建築家の作品は、まるで恫喝するように自己を主張しすぎる場合がある。そこにはクライアント(ユーザー)の姿がない。そういう建物も否定はしないが、村野さんの作品はいつもクライアントを優しく気遣っている。

 展示品の中に、村野さんの趣味のスケッチ帳があった。手慰みのように、人物像を書き殴ったノート。そこに描かれた人物画のほとんどが、後ろ姿や斜めから見た構図だという。そこに、「村野藤吾らしさ」を感じる。クライアント(ユーザー)を優しく見守るような作品。

 展覧会のちょうど折り返し地点のあたりには、村野さんが作ったスワンチェアという椅子が置いてあり、嬉しいことに、そこに座ることが出来る。やや低めのその椅子はとにかく、快適だ。低く深く座りながら、自然と背筋が伸びて、顔がやや上空を見上げる。その感じがとても気持ちいい。

 村野藤吾、優しくて気持ちのいい建築家。
 
 
 
※まだ未見だが、広島にあるという優しい人肌の教会「世界平和記念聖堂」の現物を見てみたくなった。

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※写真:*istDs

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