待たせる天才
土曜から日曜にかけて大きな徹夜仕事を抱えていたため、仕事を終えた日曜昼前には急いで仮眠をとった。すべては、ずっと楽しみにしていたあの人のコンサートを出来るだけ万全の体調で聴きたかったから。
ジョアン・ジルベルト。「ボサノバの巨人」と呼ばれる男。今から40年ほど前に世界を魅了したブラジルの局地音楽「ボサノバ」は、彼の指先と、その指先が紡ぎ出したバチーダ奏法から生み出されたと言っても過言ではない。
今年77歳。現役アーティストとして生きていること自信が奇跡とも言える男の来日を、二年前から待ちかねた。一昨年秋、彼は久々に来日、とても75歳(当時)とは思えない素晴らしい演奏をした数日後に、実は2歳の隠し子がいることがすっぱ抜かれた。
さて、一昨年の同じ頃、会場で「アーチストがまだホールに到着していないため、開演時間が遅れています。」という場内放送や、その40分後に聞いた「アーチストが只今ホテルを出ました。」という場内放送と、それを聞いた直後の場内大爆笑を聞いたのは、有楽町の国際フォーラムのAホールだったが、今年の会場も同じホール。
日曜の午前中に膨大な徹夜仕事を終え、軽く仮眠を軽くとった私は、ダッシュしてホールに向かった。彼の遅刻は想定済みだ。たぶん最低でも30分は遅れてくるだろう。だから、少し遅めの会場入りを狙った。でも、
ホール前まで来て、異様な雰囲気を感じた。それでも会場に入ろうとすると、係の人間が申し訳なさそうな表情で私の進行方向を塞ぎながら、唐突に一枚の紙切れを渡してきた。
・ジョアン・ジルベルト【東京公演】延期、【横浜公演】中止のお知らせ
「親愛なる日本のファンの皆様には、万全のコンディションで、最高の演奏をお届けしなければならない。」とのジョアン・ジルベルト本人の意向を尊重し、延期振替・中止を決定させて頂きました。
実は、一昨年秋のコンサートのライブ録音は、本人の「完全ではない!」という理由で発売されないままになっている。聴いていた私にはまったく理由はわからなかったが、彼にとっては何かが納得できなかったのだろう。
今回の延期が、完全主義者である彼らしさの一面だったとすれば、一昨年秋と同様、私たちはじっと笑顔で待ち続けるだろう。だが…。歳が歳だけに、ちょっと心配。
BGM: Bim Bom/Joao Gilberto
※Beyonce、やっぱ凄い。
※写真:*istDs
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