笑顔のDNA
私にとって彼女は、人類でもっとも好きなボーカリスト、エリス・レジーナ(故人)の娘さんにあたる。だから、最初は、やや消極的な理由で彼女のコンサートに出かけていった。古典的な表現を恐れずに使えば、お母さんの面影を探しに行った。ただ、それだけ。
それぐらいに、マリア・ヒタの評価は、私の中ではそれほど高くなかった。いちおう、発売されたアルバムは全部聴いていたが、ずっとお母さんの影を探しながら聴いてしまった。そして実際、これまでの彼女と言えば、やや中途半端に巧い新人さんという印象しかなかった。
ところが、だ!生歌を聴いて驚いた。デビュー以来わずか5年ほどだが、彼女は確実に成長していた。もはや、お母さんと比べる気にもさせてくれない。一人のブラジル人アーチストとして、急速に充実期を迎えつつあるのを感じた。
とくに、陰影のある歌い込み系のナンバーでは、かなりの声量と彼女らしい個性を振りまいていた。そりゃあ、国際水準だったお母さんほどは凄くない。歌声1フレーズで数千人を黙らせるほどの技量と気迫はまだない。でも、彼女なりの魅力がすでに誕生しつつある。エリスとは違う新しい魅力。
正直、ビックリした。しかも彼女、まだまだ伸びそうな気がする。そうしたら本当に、いつか、お母さんの唄っていたナンバーなんかも堂々と歌ってくれる日が来るかもしれない。こんなこと、こっちの勝手な願望で、彼女にはまったく関係のないことだが、どうしても期待してしまう。
さて、ステージを見ながら、何度かドキッとした瞬間があった。それは、ひょんな拍子に、マリアが笑った瞬間だった。肩を落としながら、眩しそうな表情で、ちょっと田舎っぽく笑うその素朴な笑顔が、お母さんにそっくりだった。笑顔の遺伝。この日のマリアの歌とともに、忘れられないお土産を貰った。
BGN: O Homem Falou/Maria Rita
※マリアのライブで、もうひとつ印象的だったのは、客席にいた大量のブラジル人観客。とにかくテンションが高くて、ノリがいい。場内の1/5ぐらいがそうした人たちだったので、とにかく会場は盛り上がった。とても日本とは思えないほど!
※実は、母親をエリス・「レ」ジーナ(Elis Regina)と呼んで、娘をマリア・「ヒ」タ(Maria Rita)と呼ぶのは、かなり矛盾している。が、原語発音主義に基づくとRitaはヒタになるらしい。でも、そのルールだと、母親もエリス・「ヘ」ジーナになる。でも、慣れないせいか、どうしてもエリス・レジーナと発音してしまう。
※どうしても、最近の様々な企業事件を思い出してしまう。気のせいだとしても。><ドンキ放火>株価下落で利益狙う…空売りで送検方針
※写真:Optio A20
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