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2014.05.20

特別じゃない特別?

 昨日は、作家仲間の山名君のツイートが新鮮だった。

 「今夜のテレビ、テレ東に2時間SPがあるだけで、その他の番組は1時間の通常版。こんなこといつ以来だろうか?しかしこれが健全な姿。」

 テレビ界にいったい何が起きているんだろう?…説明しよう。

 テレビ業界では、普段のレギュラー放送とは違った形態で放送する番組のことを、「特別な番組」通称「特番」と呼ぶ。通常は、放送時間が2倍になって、季節の変わり目に、普段とは違ったスペシャルな内容で放送してきた。ところが…

 ここ数年、おもにテレビ局側だけの理由により、2時間番組で放送されることが異常に増えてしまった。結果、2時間放送が普通で、1時間放送が特別なんて、よくわかんない事態になってしまった。

 その結果どうなったか?

 本来なら「毎週●曜日の▲時から」と覚えていた番組の放送日時が覚えられなくなる。もっと正確に言うと、毎週同じ時間から放送していれば、正確な日時を覚えていなくても、同じような生活をしていればだいたい見られるのだが、それが出来なくなる。

 するとどうなるか?

 人は放送を見逃しやすくなる。よほど注意深く新聞のラテ欄か、テレビ内の番組ガイドを開いて確認し続けていないと、レギュラー番組でもいったい次に放送するのが、何日の何時からなのかがわからなくなる。こうして、レギュラー番組本来の強みである「習慣化」という魅力が絶滅していく。

 ちなみに、「大改造!劇的ビフォーアフター」という番組は、覚えていると思うが、ほんの数年前までほぼ毎回1時間放送だった。ところが、ある時から一年間のほとんどが2時間放送になり、結果、次の放送日を予想することは誰にも出来なくなった。隔週ですらない。いつかはやるよ、ということでは習慣化は不可能だ。

 そうこうするうちに、「視聴率と呼ばれる業界内で広告価値を決めるための指数」が落ち始めた。おかげさまで、今のところ危険水域にまでは落ちていないが、現在のそれは、1時間時代の2/3ぐらいの数値にまで落ち込んでいる。

 面白いことに、もともとテレビ局が、1時間番組をどんどん2時間にし始めた理由はこの、「視聴率と呼ばれる業界内で広告価値を決めるための指数」を上げるためだった。いくつかのテクニカルな理由で、1時間番組を2時間番組にすれば、この「視聴率と呼ばれる業界内で広告価値を決めるための指数」は上がりやすい。

 という、この理屈のせいだけで、2時間特番、時には3時間特番、時には4時間特番とか、4.5時間特番なる化け物を量産した。結果、どうなったか?

 実際に、それで「視聴率と呼ばれる業界内で広告価値を決めるための指数」が上がったケースもたくさんあった。だから、多くの局がこのレースに乗り遅れまいとして、次々と1時間番組を2時間に増量した。放送日を減らしながら。結果、いろいろな問題が起きたのだが、そのことは今回は省略する。

 それよりも最大の問題は、このスタイルを数年頑張ってみた末に見えてきた結果だ。「視聴率と呼ばれる業界内で広告価値を決めるための指数」を上げるために行った改変のために、実はそれ数値が落ちたりするケースが増えてきたのだ。

 ここまで来たら、もう一度、みんなで戻せばいいのに、と思う。

 もう一回リセットして、「毎週一回の楽しみを待つテレビ番組」を、謙虚にもう一度目指してはどうか?と思う。たぶん、視聴者もそれを望んでいるはずだ。いったい、次の放送がいつになるかわからない番組はもはやレギュラー番組とは言えない。そう、特別番組だ。そこに習慣化はない。

 すべてのレギュラー番組を特別番組にしてしまった結果、どれも特別な番組じゃなくなってしまった、というのが正直なところで、もしも元に戻すなら、今がちょうどいいチャンスじゃないかと思っている。このまま、レギュラー番組の習慣化が絶滅の一途を辿ると、次に絶滅するのはいったい?

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