極楽とんぼとの出会い
知人に、現在配布中のR25に名前が出てたよ、と言われて慌てて見たら、加藤浩次のインタビューの中に出てた。
加藤が自身のデビュー時代について語る場面で、以下のように語られている。それは20代の加藤。劇団で出会った山本とコンビを組んだ二人が、東京吉本の若手集団に滑り込んだものの、ひたすらネタ見せの毎日が続いた。しかも、ちっとも未来が見えてこない。そんな日々の描写に続いて、加藤は語った。
加藤「自分らよりウケてたり、面白いヤツらがいるのが悔しくて。それを越えたい。悔しさの連続でしたね。そのとき、作家の伊藤(正宏)さんが見に来てくれて、変なコトやってるのがいるって、番組のネタ見せに呼んでくれたんです。その頃僕らがやってたのは“ケンカになるコント”の前身。何でもないのがマジのケンカになる…のがしっくり来ていて」
多少ディテールは違っているが、だいたいこういう流れだった。私が見た極楽とんぼの最初のネタは、失踪後、何年かぶりに息子(加藤)のところに帰ってきた父親(山本)の話だった。なんてタイトルだったっけ?タイトルは忘れた。
このコントでは、親子の背景について詳しいことはほとんど語られていない。ただ、昔の関係にいきなり戻ろうとする父親と、それを決して許そうとしない息子。二人のやりとりが何度か繰り返される。そのやりとりの末に、いつしか二人の関係は、殴り合ったり蹴り合ったりと、どんどん過激に発展していく。のちの「極楽とんぼの喧嘩」の原型になる。そんなコントだった。
さっきも書いたように、親子の詳細はいっさい語られていない。でも、喧嘩をする二人の表情や言葉の行間から、そんな親子の何とも言えない関係性が伝わってきた。舞台上では、決まった台詞もなく、ただ激しく殴り合い、ただ激しく蹴り合いをしてるだけなのに、そこに情感が感じられた。とにかく、それが面白かった。
そんなコント(と呼んでいいかどうかわからないけど)、これまで一度も見たことがなかった。熱くて激しい。何も語られていないのに、感情だけが饒舌に伝わってくる。
彼らのことを、当時一緒に仕事をしていた若手ディレクターに推薦した。彼もすぐに気に入った。まず二人を「新しい波」という若手芸人発掘番組に起用してから、当時まさに準備をしていた新番組の最後のピースとして抜擢した。それが、「とぶくすり」という番組だった。ディレクターは片岡飛鳥。
その頃の懐かしい様々を思い出してしまった。そして、思った。加藤浩次がもう一度、二人組の極楽とんぼに戻る日が来たら、私は是非とも見たいと思う。あの時、彼らと初めて会ったときに二人が演じていたあのコントをもう一度見たい!
あのコントのタイトル、なんだっけなぁ。どうしても、思い出せない。
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