はじめてのキングクリムゾン
先日、キングクリムゾンのコンサートに行ってきた。正直、年末仕事のど真ん中だったので、スケジュールはもちろん、体力的にも限界を超えた挑戦だったが、とにかく行った。観た。聴いた。そして、行って良かった!
さて、江戸時代の西洋文化が長崎出島を通してのみ伝わったとすれば、中学校時代の僕の洋楽はすべて故郷大阪は中津にあった志岐時計店の二階の4畳半の部屋を通してのみ伝わった。そこは当時、僕の幼なじみだった友達「しきっちょ」こと志岐君の勉強部屋だった。
しきっちょとは小学校の頃から一緒に遊ぶ仲だったが、ある日、前述の彼の部屋に招かれた私は、彼のいつもとは違う口調と言葉に耳を傾けていた。僕は彼のことを「しきっちょ」と呼んでいたが、彼は僕のことを「いっさん」と呼んでいた。
しきっちょ「いっさん。いっさんに今日は大切な話をする。
これは、クラスのみんなには一度も話したことのない話や」
僕「うん」
しきっちょ「いっさんはプログレって知ってるか?」
僕「知らん。なんやそれ?」
しきっちょ「音楽の名前や」
僕「新しいアイドルかなんかか?」
しきっちょ「ちゃう。いっさん、ふざけんと聞いて。
プログレは、アイドルとか、歌謡曲とか、
そんなんとは全然違ゃうねん。
学校のみんなは全然知らん音楽やねん」
僕「そうなん?」
しきっちょ「キングクリムゾンってバンド、知ってるか?」
僕「いや、しきっちょが今、何を言うてるのかさえ、わからん」
しきっちょ「わかった。まず、このアルバムを聴いて欲しい。
話はそれからや」
…と言ってから、しきっちょは、真っ黒な正方形に陰気な顔が三つ並んだアルバムジャケットから、一枚のレコードを取り出して彼の自慢のレコードプレイヤーに乗せた。それが、キングクリムゾンの「Red」だった。
1曲目の「Red」から順番にそれは流れた。全5曲。実を言うと、当時の僕はまだビートルズさえアルバムで聴いたことはなかった。洋楽、しかもロックをアルバム構造で聴くのが初めてだった。カラダ全身に電気が走った。オシッコをちびりそうになった。
以来、「クリムゾンキングの宮殿」「太陽と戦慄」「ポセイドンのめざめ」「リザード」「アイランズ」「暗黒の世界」…と、ロバート・フリップ時代のキングクリムゾンを濃厚な解説付きで次々と聴かされた。
こうして、ビートルズやストーンズより先にキング・クリムゾンの洗礼を受けてしまった。以降、僕はしきっちょの趣味のままに、ピンク・フロイド、ブライアン・イーノ、デヴィッド・ボウイ、クラフト・ワーク…。そして、しきっちょはたびたび彼の夢を語るようになった。
しきっちょ「これからはテクノの時代が来る。
俺はまもなく、日本で初めての本格的な
テクノロックバンドを作る!」
僕「しきっちょ、すごい。僕、応援する!」
そして、運命の1978年が来た。
しきっちょ「いっさん、俺がやりたかった日本のテクノ、
先にやられてもうた!」
僕「え、どういうこと?」
しきっちょ「これを聞いてくれ!」
これが、YMO最初のアルバム「イエロー・アルバム・オーケストラ」だった。ショックを受けたしきっちょの表情が忘れられない。
しきっちょ「しかも、こいつらすごいねん!
完全にやられた。もう、俺の出る幕はない…」
僕「しきっちょ…」
しきっちょはまだ中3か高1だった。今から思うと、落ち込むのがちょっと早すぎた。
※2015-2016年末年始の特番【12-01月分】
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